第一話 最後の晩餐は〝豚丼〟

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 だから、自分の死体は必ず発見される場所に放置してほしいと伊藤は言った。亡骸がなければ、そもそも死亡が認定されないからだ。冗談混じりだったが、目は笑っていなかった。  デスゲーム――そう、自分たちは五日前、ここに突然、連れてこられ、スピーカーから流れるロボットボイスの命令で互いに殺し合いをさせられた。逆らうことは許されなかった。  陽介のよどんだ目が、テーブルの脚元に横たわる死体――伊藤が煙草を拝借した男に向けられた。  顎のないフグのような顔の下に、直径三センチほどの太い銀の首輪が巻き付いていた。死体となった後もそこに居座る鉄輪は、一種、獲物を捕らえた食虫植物のツタを思わせた。  一度食いついたら離れない……たとえ宿主が死んでも……。  陽介の手が自分の首に伸びる。密閉された空間をただでさえ息苦しく感じさせる〝それ〟は、当然、彼の首にも食い込んでいた。
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