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部屋の隅に置かれた白い冷蔵庫に向かった。陽介も立ち上がり、後を追う。
その冷蔵庫は胸ぐらいの高さで、一人暮らしの学生が使うような小さなものだった。血のついた手で何度も開けたからだろう、取っ手の辺りが赤く汚れていた。
伊藤は気にせず開けた。二つの頭が中を覗き込む。
「ほとんど何も残ってないな……」
「もともと大人7人ぶんとしては食材が少なかったですからね」
一日ごとに一人死ぬわけだから、食べる量も徐々に減っていく。主催者はそれも織り込み済みだったのだろう。
それでも最初は野菜や肉、卵などもあった。五日間の間に少しずつ消えていった。今、残ってるのは、キャベツの芯部分と白いトレーにのった豚肉だけだった。
伊藤が顎に手をあて、献立を素振りを見せる。
「米はあるよな?」
陽介がうなずく。冷蔵庫の横に10キロの袋が置いてあった。まだ半分以上残っている。「炊きましょうか?」と尋ねる。伊藤が「頼む」と答えた。
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