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Ⅰ
家に帰るなり。まだコートも脱いでいない。
「え~、どうしよう」
嬉しすぎて、手を出せないでいる希を悟は呆れたように見る。
「なんだよ、ペットショップで一目惚れしたって言ってただろ? 二時間離れなかったんだからな。ほれ」
(そんなにいたっけ?)
悟に促されながら、希は恐る恐る手を伸ばす。悟から差し出されたところで、もう一度手を引っ込めた。
「待って!」
そう言って手袋を外す希のことを、悟は少し微笑んで見つめた。
総じておおざっぱだった。四角い部屋を丸く掃くという言葉は、彼女のためにあるんじゃないかと思うほど。でも、優しい女だった。おおざっぱだけど、大切なモノには必要以上に丁寧。そんなところに魅かれた。
二人で暮らしだして一年。クリスマスイヴの今日は、その同棲記念日だった。外食をしようと言った希に、家で過ごしたいと頑張ったのは、このプレゼントを渡したかったから。
手袋を外した希がおずおずと手を伸ばした。伸ばされた手にそっと渡す。
「同棲一年目記念と、クリスマスプレゼントな」
手袋を外した希の手に抱かれた小さな命は、おとなしく口をモグモグとさせている。
その日は、段ボール箱の中で小さな彼は過ごした。
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