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広くはない2DK。リビングのテーブルの上に、希の手料理が並べられている。小さなテーブルから美味しそうな香りと湯気が漂う風景が、悟はとても好きだった。仕事の疲れも、一日の嫌なこともその湯気に包まれて消えていく。空いた心の隙間には、湯気と香りと一緒に暖かいものが詰まっていく気がする。そして希の笑顔も。
「希、シチューにニンジン入ってない」
悟の言葉に希はいたずらっ子のように笑う。
「ニンジンは、うさちゃんのご飯にする」
そんな笑顔に、食欲が追いやられる。
(飯はいいや)
と悟は思う。すぐに食べたいものは他にある。
細く切ったニンジンを新しいルームメイトに差し出している希の後ろから、そっと近づいてその腰を抱き締めながら首筋に唇を這わせた。
「ご飯は?」
振り返った希は少しだけ戸惑う。でも嫌がるわけじゃない。そのまま唇を重ねると薄く隙間を作る。
ダンボール箱の中のガサゴソという音を聞きながら、悟はふと思った。
(今夜から、こいつに見られながらするんだな)
希の甘い鳴き声を聞きながら、この声が好きだと悟は思う。だから希が一目惚れしたのが、それを妨害する仔犬じゃなくて良かったと考えながら、彼女の柔らかな胸に顔を埋めた。
「シチュー冷めちゃったから温めなおす」
スカートを直して、悟が脱がせた小さな下着を手に希がキッチンに消えたあと、悟はふと新しいルームメイトのダンボールを覗いた。
「なあ、うさぎって何食うの?」
暖めなおしたシチューを運んできた希は、呆れた顔で答える。
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