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ペットショップの狭い檻から救ってくれたのは、若い夫婦だった――――
それまでの我輩は、あの小さな世界が全てだと思っていた。
初めてこの家に来た時は目が飛出る程驚いたものだ、一頻り新しい世界を確認して戻って来ると、いつもと同じ匂いがする場所が一ヶ所ある。
ペットショップにいた頃からずっと遊んでいたオモチャだ。その隣には、すこぶる寝心地の良さそうな座布団が置かれてある。
我輩はこの場所が落ち着く――――
「ハックー、ご飯だよー」
「ニャァーーー」
なんてね、やっぱり僕は僕だ、飼い主夫婦が〝名無しで有名な猫〟の話をしていたから真似してみたけど、僕には自分の事を[我輩]というのは窮屈だ。
それに僕はグレー毛並みの[アメリカン・ショートヘアー]だし、だからアメリカ文化なんだよね、まあ産まれも育ちも日本だけど......
僕には[ハック]という名前がある。この家に来た時、お母さんが付けてくれた名前だ。何故この名前になったのかは分からない。でも気に入っている、だってあの狭い世界では、名前なんていう概念すら無かったから、そして飼い主夫婦の事を僕は、お父さん、お母さん、と呼んでいる。
子供がいないこの夫婦は、僕を息子のように可愛がってくれた。
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