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「ごめん、いきなり、何を言い出すんだと思うかもしれねえけど、その、……俺の話を、聞いてもらえないか。いや、といっても、何を話していいのか、分かんねえんだけど、ただ……」
あんたの名前だけは、思い出さなきゃならないような気がする。
そんなことしか言えなかった俺に、佐藤という男の目は、まるで水面のように揺れた。
それを見た時に、俺はなぜか、心がどこかに辿り着いた気がした。
ここからだ。
ここから、ゆっくり、知っていけばいい。
浮遊していたものが、やっと落ち着いたのだから。
クリスマスイブの夜が、始まろうとしていた。
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