第一章 借りを返しにいきますね。

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第一章 借りを返しにいきますね。

 目を開けてみれば、そこはギルドだった。  へー、転移した場所に戻るわけじゃないんだ……。そうだよね、一ヶ月も空けてたわけだし。  一ヶ月……迷宮にこもって一ヶ月だ。いろいろなことがあった。いろいろな人と出会った。まぶたを閉じれば、すべて思い出せる。まだ余韻が熱を引いている。  けど、それに浸ってはいられない。アリスにはやることがあるんだから。  ふぅ、と息を吐いて一歩を踏み出す。と、出鼻をくじくように念話がかかってきた。 《はーい》  もぅ、せっかく意気込んでいたのに。なんて思いつつも念話に応じると、脳揺らすほどのボリュームで聴き慣れた声が頭に響く。 《ア、アリスか!?》  う、うるさい……。これ絶対声に出してるでしょ。 《どしたのお兄ちゃん……》 《どうしたって!? どうしたもこうしたも、お前今どこにいるんだっ!?》 《どこって、ギ、ギルドだけど……》 《ギルド!? どこの!?》 《ちょっ、うるさい、うるさい! 元ルーブル美術館だよ》  と、そう応えた直後、バンッと勢いよくギルドの扉が開いた。 「アリスッ!」     
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