第一章 借りを返しにいきますね。

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 アリスはその頃はまだ小学校にも通ってなかったからよくは知らないけど。 「それで?」 「僕はもう十歳だったからね。月見里家との親睦会に連れて行ってもらったんだよ。まあ、親睦会なんて名ばかりで、実際はお互い腹の探り合いだったわけだけど……そのときにちょっとね」 「へぇー……」  そのときは雪さん六歳か……。  どんな子供だったんだろう。 「そんな、恐怖で人を支配するようなやり方をするやつには見えなかったな。もっと頭のいいやつに見えた。そこには本家しかいなかったはずだから、現当主とは違うだろう」 「頭のいいやつ、か……」  悪くはないんだろうけど、そこまで突出していいようにも見えなかったな。  挑発にのりやすいし。 「そもそも、ゲーム開始直前とはいえ、一応親戚が当主になったという情報は入っていたからね。月見里家から発信された情報なんて疑って然るべきなんだが、今は信じてもいいだろう」 「そっか……」 「で、だ。話を戻そう。日本の土地を買う理由は? なにか策があるんだろう?」  真剣な面持ちのまま尋ねるお兄ちゃん。  こういうときに関しては、頼りになりそう。 「策って程じゃないよ……土地を買うのはとりあえずの救済措置ってとこ。買う場所はセーフティゾーンの輪郭に沿うフィールドゾーン」     
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