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「月見里って名前は気になったけど……ほとんどはアリスのことなんか知らない人たちで、色眼鏡なしでアリスのことを見てくれる人たちで」
「そうだろうな。見た目は、普通の女の子なんだから」
そう。
見た目だけは。
普通の女の子。
「普通に……憧れてたんだと思う。普通の家に生まれて、普通に育って、普通の学校に行って、普通に友達を作って、普通に遊んだり、して……」
「そうか……」
哀しげにつぶやくお兄ちゃんに、少しだけ罪悪感というか、胸が締めつけられるような気分になった。
「別に今までの暮らしが嫌だったっていうんじゃないの。お父さんもお母さんもお兄ちゃんも優しくしてくれて……でも、私の世界にはそれだけだった」
今でこそ、ここの人たちも周りは全員敵のような顔をして生活してるけど、アリスはずっとそうだった。
ずっと。
「他の家に同年代の子はいたけど、将来敵になるってお互いわかってたから、どうしても仲良くはなれないし」
やっぱり、そう考えると、アリスは迷宮に友達を作りに行ったのかもしれないな。
だって、友達が欲しかったことは事実だし。
「窓から『普通の子』達が遊んでいるのを眺めてると、ちょっと、ね」
「……そうか、しかし、月見里雪のところに行ったとして、迷宮で会った面々と再会できるかはわからないだろう?」
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