第一章 借りを返しにいきますね。

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 目を皿にして見ていると、そういえばそんなことを雪さんが言っていたな、と一つの可能性にたどり着いた。  これを見る限りではあんまり肯定したくない可能性ではあったんだけど。  まあ、そういうことなんだろう。 『聞くところによれば、あの女神は見た人の好みに合わせて姿を変えるらしい』  とは、雪さんの言葉だ。  姿形のみで言うなら、アリスの好みなんて長身で顔の整った……それこそお兄ちゃんのようなタイプだったはず。  本当、いろいろとやらかしてくれましたね……雪さん。  これがアリスの深層心理というなら、つまり、アリスの好みのタイプは雪さんに変わってしまったらしい。  そう考えると、不思議と笑みが零れた。  この好みのタイプっていうのが、恋愛感情かどうかは実際のところよくわからないけど、もしそうだとすれば、アリスも随分と骨抜きにされたもんだ。  まあ、アリス自身が恋愛感情として意識する前に気付いてしまった時点で、もう、これが恋愛感情となることはないんだろうな。  見月さんに悪いし、そもそも、見月さんに勝てる気はしないし。  さて、そんなことはどうでもいいとして、一体神はなんの御用があって姿を見せたのか。  それに意識を向けようかな。     
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