第一章 借りを返しにいきますね。

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 アリスが思索をやめた直後、当然たまたまなんだろうけど、タイミングを見計らったように神は口を開いた。 「あー、やっぱこれ、結構面倒だな」  ちっ、と舌打ちをして、頭をぽりぽりと掻くその姿は雪さんと酷似していた。 「あ? 何の用かって? ははっ、まあまあ、今から話してやるから落ち着けって」  宥めるように手をひらひらと動かす神。  一体、何を始める気なのか……。  正直、不安しかない。  だいたいこの神はおおよそろくなことをしそうにない。  この軽薄そうな雰囲気……っと、それは雪さんの雰囲気だった。  雰囲気なんて除いたって暇つぶしで世界を変える神だ。  アリスとしては、本当に暇つぶしでこんなことをやってのけたのか疑わしいけど、それは本人に聞く方法がないからどうとも言えない。  そんな神が今度はどんな災いを振りまきにきたのか、心配でならないのは、きっとアリスだけじゃないはず。 「ま、諸々の説明は後にして、先に結論だけ述べようか。なに、大したもんじゃないさ。俺が姿を見せた理由、それは、そろそろイベントを開催しようと思ってのことだ」  その言葉に一瞬だけ、脳内にはてなマークが浮かんだけど、それもすぐに消える。  イベントがあること自体は説明詳細に書いてあるから。  そこで、新たな疑問が浮かぶ。     
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