第一章 借りを返しにいきますね。

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 どうしたもこうしたもない。  お兄ちゃんは聞きたいのだろう。  たった今、自分の妹が発した、殺気と集中力についてを。 「い、いや……?」  取り乱したのが余程恥ずかしかったのか、お兄ちゃんは小さく咳払いをして、改めて席についた。  そんな反応をするのも無理はない。  殺気と集中力については、正直、アリスが知りたいくらいだ。  でも、まあ、理由が考えられるとすれば、それは一つしかなく、当然、迷宮探索の賜物、ということになる。  おそらく、階段は安全とは言えども常に気を張っていなければならない迷宮で、仲間達の出す殺気に当てられ続けたから。  ちょっとイラッとしただけでこれだ。  雪さんも困ってたけど、その気持ちがよくわかった。  これを扱いきるのは、難しい。 「はぁ……」  アリスのため息と同時に、神は長々とした謝罪を終えたらしかった。 「ということで、まぁ、今回姿を見せた本当の主な理由は謝罪だ。さて、じゃあ、イベントについての説明に入ろうか」  と、神は申し訳なさそうな顔から真剣な表情へと切り替える。  どんなイベントが始まるんだろう……。     
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