第一章 借りを返しにいきますね。

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 これが彼なりのお詫びというわけだ。   「イベント名は『ゴブリン大発生』。詳しいルールは説明詳細を参照するように。じゃあ、またな。お前たちの健闘を祈っている」  経験値効率アップ。  相手はゴブリン。  これはやるしかない。  そして、やると決まれば……。 「お兄ちゃん」 「ああ」  どうせやるなら、一番だ。  このイベントでレベル八百に到達し、誰よりも多くゴブリンを倒し、一位の賞品を手土産に雪さんの元へ。  そんな決意を胸に、アリスは眠りについたのだった。  ◇◆◇◆◇◆◇  白を基調とした清潔な空間。  目が痛くなるような白さではなく、柔らかく包み込むような優しい白。  そんな白々しい空間で、真っ白な天井を見上げるように仰向けに転がる神。 「はぁ……しんどい」  黒をベースに薄紫の模様が描かれた着物は乱れ、彼女の艶やかな肢体を浮きだたせていた。 (ギルドに各種施設に従業員用の睡眠空間に、セーフティゾーン、魔物のポップ、クリスタル管理……)  己に課せられた負担を考えると、先よりも深いため息が零れた。 「義務とは言え、この調子じゃ力が……。早く、慣れてもらわないと」  彼女のつぶやきに答えるものはいない。     
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