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その言葉に従い、ジャネット家には及ばないものの、第二勢力と言っても遜色のないデュラン家のご息女、エマ・クリスティーヌ・ド・デュランを屋敷へ招いた。
当然、褒められるとばかり思っていた。
褒められたくてしたのだから。
でも、お父様は険しい表情を浮かべ、言い放った。
「アリス、デュラン伯爵家との付き合いは控えなさい。はぁ……次からはもう少し考えてから行動してくれ」
「え……?」
侮蔑的な視線を一身に受け、悟った。
私はなにか失敗してしまったのだと。
それでも、初めて出来た友達を失いたくなかった。
「お、お父様っ! そんな、彼女はいい人柄でしたわ!」
「それはそうだろうね。我がジャネット家の方が立場は上なのだから。デュラン家はジャネット家の転落を狙う卑しい血族だ。相手にしてはいけない」
それだけ言って、お父様は平然と玄関へと向かう。
「で、でも――」
「アリス、お父様に逆らってはいけないわ」
私の言葉を遮ったのは、お母様だった。
いつもの優しい笑みはどこにもない。
一体、この人たちは誰なんだろう、と、本気で疑ってしまいそうになった。
「早く中に入りなさい」
私の存在なんて気にも留めていない様子で進んでいく二人を見て、焦燥感に刈られた。
このままどこかへ行ってしまうのではないか。
「お父様っ! お母様っ!」
走っても走っても届かない。
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