第二章 普通の女の子に仇はいらない。

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 必死に叫んだ声は、もう、二人の耳には届かない。  視界が暗転したのは、間も無くのことだった。  室内を照らす朝日に、思わず目を伏せる。  なにも掴めなかった両手のひらには虚しさだけが残っていた。  随分と……懐かしい夢を見た。 「エマ……」  ぽつり、呟いた名は空に消える。  あの頃からだったかな……ジャネット家に、お父様とお母様に疑念を抱いたのは。  ジャネット家とデュラン家の仲は、もう修復不可能な域まできている。  それでも、なんとかして協力を得なければ。  お金も人も足りない。  まあ、まずはレベル上げか。  もうイベントは始まってる。 「頑張ろう」  自然と零れた台詞に押されるようにして、アリスは部屋を後にした。  **** 「うっわぁ……凄いね」 「だな……」  お兄ちゃんと合流して朝食を食べ、今、早速ゴブリン討伐に来たわけなんだけど……。  眼下に広がるは千はくだらないといった数のゴブリンの群れ。  ここ以外にも大群がそこかしこに見られる。  あの神……全然反省してない。  ちなみに、迷宮で獲得した経験値効率アップの果物は既に摂取済みだ。  どのくらい効果があるのかは分からなけど、ないよりマシでしょ。 「どうする?」     
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