32人が本棚に入れています
本棚に追加
驚くアリスにジスレーヌがくすくすと笑う。
なにがおかしい……。
「アリスの助力があれば勝てるかもしれないな。それに、怖がってばかりではなにも進まないだろう? それはアリスがよく分かっていることのはずだ」
「うう……分かった」
渋々頷き、アリスの武器であるクロスボウを構え直す。
「それで……どうするの?」
「とりあえず掴まっててくれ」
ジスレーヌの言葉に従い、肩にぎゅっとしがみつく。
と、一瞬の浮遊感に目を瞑り、再び開けるとジスレーヌは鷲の姿に戻っていた。
「戻っちゃうの?」
「ああ、あの木偶の坊の姿では少々分が悪いのでな」
「……どう分が悪いのかがアリスにはよく分からないんだけど、これはアリスがバカだからじゃないよね?」
そう尋ねると、ジスレーヌはまたもや可笑しそうに笑った。
悔しい……。
「違う。アリスは頭のいい子だ。分からないのは、ただ、経験が足りないだけだろう。二ヶ月戦い抜き、そのうち一ヶ月を迷宮で過ごしたとて、十幾年のただの少女だった期間がなくなるわけではないからな」
それは……そうだろうけど。
でも、確かに、少しばかりの自惚れはあったかもしれない。
いくら戦いに身を投じてたとしても、それはたった二ヶ月の期間に過ぎない。
最初のコメントを投稿しよう!