第二章 普通の女の子に仇はいらない。

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 ひゅう、と風を切る音を立てて、まだなにもない空間へ矢が飛んでいく。  まるで風がないかのように、真っ直ぐと。  そして、矢は進行方向に現れたリントヴルムゴブリンの翼を射抜いた。  墜落するゴブリン。  そう、翼さえ使えなくしてしまえば、戦闘は終わる。  そんなことより、だ。 「み、見たっ!? ジスレーヌッ!!」 「あぁ、しっかりと見ていた。やったな」 「うんっ!」  たった一射で射抜けたのは初めてだったし、更に少しだけ風魔法を纏わせることも出来た。  これを喜ばないで、いつ喜ぶんだって感じ。  うん……なんか、本当に、これだけ綺麗にいくと爽快だな。  そりゃあたまたまなんだろうけどさ……でも、もう一回って、そう思える。 「さあ、アリス。敵はまだたくさん残ってるぞ」 「うん」  次は風魔法の付与に力を入れてみることにしよう。  どっちもは出来ない。  狙いを定めるか、威力を上げるか、どっちか。  最初から全部出来る才能はアリスにはない。  だから、一つずつ丁寧に。  風属性魔法、例えば、風針(アズベンテ)を使うときのような感覚を思い出す。  あの全身からなにかが抜ける感覚を手に集中させ、再びイメージを固める。  矢が風を纏い、真っ直ぐ突き進むイメージ。     
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