知ってる景色と知らない景色

4/9
前へ
/9ページ
次へ
雪が降り始めた。どうりで寒いわけだ。 30分おきに来るバスがまた1台来た。 けれども彼女は立つ様子もなく、ただじっと座ってバスのドアが閉まるのを見ている。バスが行ってしまうのを見送りながら、ギュッとケータイを握りしめていた。 まさかまだ警察に電話しようと……! いやいやそれはないよね? 「ねぇ、サンタさん」 「何?」 僕は極めて優しい声音で返事をする。 別に彼女を怖がらせたいわけではないのだ。 「知ってる景色と知らない景色。どっちの方が面白い?」 知ってる景色と知らない景色、か……。そうだな、面白いのは……。 「君はどっちなの?」 「どっちも面白いと思わない」 「どうして?」
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加