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ただ黙って彼女の言葉を待つ。
あぁ、寒い。少しずつ気温下がってる。雪、積もるかもしれないね。暖かい場所に行きたいな。
「家や学校は知ってる景色。どっちも楽しくないの。親は厳しい。勉強しろ、成績落とすな、学校を休むな。……学校では、『あの子友達いないんだって』『かわいそう』『あんなに勉強ばっかりしてさ、真面目アピール?』」
彼女は話すたびにケータイを握る手の力を強くする。
そしてその横顔は泣いているように見えた。吐く息が白くなって、すぐに消えた。
「行ったことのない町や国は知らない景色。まだ戦争をしてる国だってあるって聞く。満足に暮らせない人もいるって聞く。……どっちが面白いんだろ」
僕は少し考えた。
どっちが面白い? 答えなんてないんじゃない?
この子は一体、毎日どんな景色を見ているんだろうか。
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