知ってる景色と知らない景色

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「なら、反抗してみたらいい。だってそれって知らない景色……でしょ? ワクワクしない?」 彼女はハッとしたように僕の方を見た。 「知らない景色も、案外身近にあるよ。遠い町や国を想像しなくても……ね」 「そっ……か。それは、面白そうだと思えるね」 「そ?」 「よしっ! 私、まだ頑張れそうな気がする! ……サンタさん! ありが……え?」 彼女はベンチから勢いよく立ち上がる。その顔はもう迷っていなかった。 そして振り向いた彼女は静止する。 そこにはもう誰もいない。 「サンタさん、ありがとう」 彼女ははそう小さく呟くと、前を向いて歩き出した。
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