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「おいおい、無理して賢そうなこと言うな。お前の頭が空っぽなのは、みんな知ってんだからよ」
徳山の軽口に、中田がムッとした表情になる。
「はあ? あんたみたいな、プロテインバカにだけは言われたくないんだよ」
「誰がプロテインバカだ! だいたい、プロテインバカって何だよ!」
「プロテインの飲み過ぎで、脳までプロテインになったあんたみたいなバカのことだよ!」
「んな奴いるか!」
言い合う中田と徳山を、府川はニコニコしながら眺める。この二人の口喧嘩……いや痴話喧嘩は、いつものことなのだ。いわば、このカップルにとってのウォーミングアップである。
だからこそ府川は、中田をいやらしい目付きで見ていたヤクザを不快に思ったのだ。府川にとって、徳山も中田も大切な仲間なのだから。
その時、風間が近づいて来た。府川の肩に手を回しながら、葉巻を取り出す。
「じゃあ、二人のイチャつきが終わったら、みんなで下のラーメン屋にでも行くか? あそこは汚いが、美味いからさ」
「あ、いいっすね」
府川が答えると、風間はニヤついた表情で葉巻を咥えた。
「俺たちゃあ、道理の通らぬ無法者から金を奪う。頼りになる神出鬼没の特攻野郎なのさ」
勝ち誇った顔つきで、そんなセリフを吐いた風間。だが、府川には何のことだか分からない。思わず首を傾げる。
「はあ? 何を言ってるんですか?」
訝しげな表情の府川に、風間は苦笑した。葉巻に火を点け、ため息と共に煙を吐き出す。
「このネタが通じねえのか。俺ももう、おっさんになっちまったんだな……」
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