憧れ。

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憧れ。

5月に入って直ぐある記録会に 俺ら一年も出るらしい。 仮入部って やっぱり入部ってコトなんだなぁ 顔に出ててらしい。 「楠木、お前他の部活見に行くか?」 部長が声をかけてきた。 「えっ」 と声のする方に顔を向けると 直ぐ斜め上に部長の顔があって驚いた。 「お前綺麗だな。」 部長は悲しそうに俺を見てる。 「部長?何言ってるんですか? 俺、陸上続けようと思ってますよ? 勝手に陸部追い出さないでくださいよ。」 とニカっと笑って見せた。 さっきの部長のコトバは聞かなかった事にした。 「ホントか?良かった!吉岡と櫻も陸部に決めてくれたんだ。 嬉しいよ俺。」 部長はまるでシッポをぶんぶん振る仔犬みたいに見えた。 先輩たちは 記録会に向けての調整に入っている。 校庭での測定なのに 既に都大会の標準を切っていたりして、 陸上初心者の俺でも分かるくらい 見惚れる動きを見せつけてくる。 一年の俺には 憧れがそこらじゅうに 散らばっている感じだ。 俺もあの中に 入りたいなぁ。
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