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「さ、さすが社長です。よく、社員のことを見てらっしゃいますね。」
社長から
私へと向けられる
甘い視線に耐えきれずに
視線を逸らしながらそう答えた。
「違う」
「え?」
「社長だからとか、社員だからじゃない……お前だから……相手が他の誰でもない唯香だから自然と目が行くんだよ。」
「……」
「どこにいても、何をしてても俺はいつもお前の姿を探してる……。探して見つけてはホッとする俺がいる。」
「い、いけませんよ、一人の社員だけを特別扱いするのは。」
なんとか
ぎりぎりのところで
平然を装いながら
私は社長へとそう言葉を返す。
なんだか
いつもと雰囲気が
違いすぎる社長に調子が狂う……
「……そうだな、社長失格だな。でも、仕方ないだろ。どうしても俺はお前に甘いし、お前だけを特別扱いしたくなる。どんな時でも傍に置いておきたくなる。」
「だ、ダメです……」
「わかってる。だから、これでも社内では抑えてるつもり。」
いや、全然
抑えてないです社長……
取引先の
会社に出向く時も
出張に行く時も社長は
決まって私のことを指名する。
仕事が
できない私が
社長に気に入られ
こうやって特別扱いされることが
面白くないと感じる人たちから
反感を買うのは思えば当然のことかもしれない。
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