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拭いただけって……
何か問題でもとでも
言いたげな表情を浮かべながら
そう言う社長に
私はただただ言葉の代わりに
酸素を求める金魚のように
口をパクパクとさせるしか出来なくて。
「ドキドキした?」
「なっ」
「俺に惚れそう?」
「ドキドキなんかしてませんし、惚れません!!」
「残念……」
また
からかわれた……
慌てふためく
私とは裏腹に社長は冷静で
ほくそ笑みながらコーヒーを飲んでいる。
本当
わからない……
どこまでが社長の本気で
どこまでが社長の冗談なのか……
「食べないのか?仕方ないな。俺が特別に食べさせてやってもいいぞ?」
「遠慮します、結構です。」
「クスッ。言っとくが、この俺がここまでしてやるのはお前だけだからな?」
こんなにも
文句なしの素敵な男性から
思わず
クラッとするほどの
口説き文句を言われても
心揺れない私はやっぱり可愛くない冷めた女だ。
でも
どうして
社長がそこまで
私にこだわるのか
私には到底理解できなくて……
「……どうして私なんですか?」
手に
持っていた
スプーンを置き
私は社長へとそうたずねた。
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