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「琥珀がこんなに弱気なんて珍しいな」
「だって相手が朝比奈サンだよ?! オレがこれまで出会ってきた人間をランキングしたら、上位三名には入るよ?!」
「いったいどういう基準のランキングだよ? ――琥珀は朝比奈を警戒してばかりだけど、一番重要視すべきは、市川君の心だろ」
軽くちゃぶ台を拳で叩いて言い返せば、最もな言葉と共にデコピンをされた。
「イタッ! 不意打ちズルい!」
確かに彼が言う通り、朝比奈サンがどうちょっかいかけてこようが、最終的にどうなるかは市川サンの心次第である。
敵ばかり警戒して注視している間に、本命に逃げられてしまう、なんてことがあっては本末転倒だ。
「だからまず朝比奈どうこうより、市川君の気持ちを離さないことに注力すべき。疲労しない程度にな」
「……そーだね! 一番大事なのは、オレたちがお互い好き同士でいることだもんね! トモ先生、オレめっちゃ理解した!」
「よろしい。だから朝比奈と喧嘩すると決めるのは、まだ先にしときな」
天使な外見の幼馴染みは優雅に笑むが、次に話のつながりが見えないことを言い出した。
「それに市川君は嘘をつくと、良心の呵責に激しくさいなまれそうなタイプだし」
「ん? どゆこと?」
首をかしげてみせれば、天使は得意のデビルスマイルを浮かべる。
「もし心変わりしたら、喧嘩になるより早く、別れを切り出して来そうじゃない? と思って」
「急に嫌なこと言わないでくれる?!」
「ま、それまでは平気ってことで」
「平気でいられるかー!」
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