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声音と言葉のチョイスはトモらしい、いつも通りのものだったが、表情は慈愛を感じさせる優しい微笑みを浮かべていた。
(珍しく外見と一致する、レアな天使のトモだ……!)
若干の神々しさをトモに感じながら、オレは甘えが隠せない、すがるような質問をしてしまう。
「ヘーキかな? 市川サンを盗られずにいられると思う?」
(大丈夫じゃなくても、大丈夫だと今は言って欲しい……)
するとオレの浅ましさを見透かしたように、「僕が保証出来るわけないだろ」と冷たく返されたが、出来る幼馴染みは即フォローもしてくれた。
「琥珀が市川君に捨てられるかどうかは分からないけど、お前にはまだまだ伸びしろがあると思うよ。朝比奈はもう完成している感があるけど。――お前なりに色々、乗り換えられないように頑張ってるんだろ?」
「……まぁね」
トモの質問に、オレは背伸びを見透かされていることに恥ずかしさを感じながらも、うなづく。
『うん、ごめん。年上希望だから』
市川サンはゲイバーではじめて会った時、そう言った。
だから年下であることをマイナスに感じさせまいと、オレは所々で頑張って背伸びをしている。
もちろんそんなカッコ悪い舞台裏を見せたくないので、バレないように秘密裏にでだが。
「市川君は将来性とか考えて、お前を選んだわけじゃないだろうけどな。彼は馬鹿じゃないけど、別に計算高いわけでもない。――打算的な奴は朝比奈が嫌うタイプだし、お前も好きじゃないだろ?」
「好きじゃないね……」
朝比奈サンほどでなくても、オレの周りにもそういう奴は多く集まる。
オレがモデルだから、オレの姉のさんごが人気モデルだから。……そういう理由で、何らかの利益を得ようと、利用しようと近づいてくる奴は多い。
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