翌年、五月(SS)~後編①~

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 そのことを嫌だなと思うけれど、仕方ないな、とも思っている。  立場や肩書きから逃れることは難しいし、オレだって他人を絶対色眼鏡で見ないか? と訊かれたら「いいえ」なのだから。 (……だから市川サンの損してそうなお人好しな性格に、時々ヤキモキさせられるけど、そこを絶対に直して欲しいとか思わないのかも? 好きであることの要素のひとつなのかもなぁ)    市川サンからしたら、迷惑千万だったろうオレとの出会い。  ヤることしか考えていなかったような、最低なオレだったけれど、そんな相手にもお人好しさを発揮して救ってしまった彼。   「僕の見解だとね、朝比奈の『友達になりたい』発言は全部が全部、嘘ではないと思うよ」  オレが恋人の欠点であり美点でもあることに思いを馳せていると、トモは急に議題を変えてきた。 「どうして?」 「間に市川君を挟んでいるから。何だかんだ言っても、今彼はお前のことが好きなんだから、当然琥珀贔屓になる。なら下手なことをすれば、自分の株を落とすことになることぐらい、朝比奈だって理解した上で言ってると思うぞ」 「でもそーゆーことも見越して、あのヒト動きそうじゃない?」  トモは市川サンを信用しているようだが、オレはかなり懐疑的な目で見てしまう。  だって他の人間ならいざ知らず、今回相手にしているのは朝比奈サンだ。   「だから『全部が本当』と、僕は言ってないぞ。 言葉通りまるっと、馬鹿みたく好意的に受け取ったら阿呆だからな!」 「言われなくても分かってる! そっちじゃなく、百パー罠じゃない、てのをオレは納得しきれないだけ!」  追加説明を受けても信じきれないというか……疑心暗鬼になっている。
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