翌年、五月(SS)~後編②~

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 市川サンの母親は昼の新幹線で地元へ帰るというので、「集まるのは午後から」ということが、そこでまず決定した。  次に集合場所決めをしたのだが、一番最初は映画館のある、巨大ショッピングモールに現地集合だった。  だが「アニメショップで予約している物の引き取りがあるから、そこへ寄ってから向かうね」というような話を市川サンが途中で漏らしたため、オレが「まずそこで市川サンを拾ってから、全員そろって映画館へ行こう」と提案した。  朝比奈サンがアニメショップ前集合程度でひるむとは思わなかったが、市川サンの趣味を知っているかなどを、一応確認しておきたかった。  その結果、「構わないよ。そうしようか」と朝比奈サンに即答される、という何の面白味もないオチがついたのだが。 『あのさ星宮君 今日は俺も交通手段が電車だし、俺たちは駅で合流しない?』    前述の経緯により、集合場所はアニメショップ前になった。  ――が、リアルタイムでの朝比奈サンからの変更要望に、オレはどう返信すべきか迷う。   (……朝比奈サンとオレの二人きりになるのは、精々市川サンがトイレに立った時くらいだと思っていたのになぁ……)   『それとね、市川君待ちの時間を使って買い物がしたいんだけど、いい? 母親から「どうしても!」と頼まれちゃって 目的の店は駅地下にあるし、すぐ終わるから、俺の用事につき合ってもらえないかな?』  いっそう気持ちがどんよりする中、朝比奈サンから続けてメッセージが入る。   (おつかいのつき合いね……。それ関連の話でお茶を濁しつつ時間消費するなら、ギスギスしそうな駆け引きアリ前提の雑談しているより、まだマシそう……?)    そう考えて『いいですよー!』と返信をしてから、「これって好機なのでは?!」ということに気がつく。
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