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「いいえ。お気になさらず。――それで、朝比奈サンが頼まれた買い物って何なんです?」
一応これから何処へ向かうのかをある程度知っておきたいと思い、頼まれ物が何かを確認するが、これ以上の無駄話はしないつもりだ。
使える時間は短いのだから、さっさと本題に入らなければ。
市川サンが来るまでにカタをつけるのだ。
「石鹸だよ。――申し訳ないけど、ちょっとだけつき合ってね」
「ええ、構いませんよ」
地下街へと歩き出す、朝比奈サンの隣に並んで進む。
(この地下街で石鹸を売っている店はいくつかあるけど、マダム向けの高級品を扱っている店はあったっけ?)
そんな疑問を持ったがどうでもいいことなのでスルーし、さっそく本命の質問のための前フリをする。
「あの、朝比奈サン。訊きたいことがあるんですけど」
「ふふ、だろうね。どうぞ。何かな?」
予想通りだとばかりに笑って先を促してくる彼にイラッとしたが、オレも予定通りストレートに尋ねることにする。
「どうして今日、オレを誘ったんですか? 『友達になりたい』なんてどういうことです? ぶっちゃけ、朝比奈サンは市川サンのことまだ好きですよね?」
恋敵がまずどういう反応をするか見逃さないため、ガン見しながら訊く。
――想定内ではあったが、彼は聖人のような柔らかな微笑みを、わずかだって崩すことはなかった。
「直球だなぁ。……そうだね、そういうところも含めて、星宮君が魅力的だからかな」
「ハァ?」
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