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感情的になってはいけない、と思うが、つい自分の声が冷たくなるのが分かる。
「ふぅん? 俺が異端だと? ――まぁ確かに君が魅力的だから、という理由だけではないんだけどさ。……俺、市川君と元通りの関係に戻りたいんだ」
「元通りじゃないんです?」
相談時にトモは、『今はもう元通り、表面上は普通の友達同士に戻ったように見える』と言っていたのだけど?
当事者で小心者な市川サンですら、ふった相手の車の助手席に乗り、送ってもらえるくらいなのに?
「市川君は元通りと思って、星宮君にもそう言っているんだね」
意外そうな顔をしているだろうオレに、朝比奈サンは眉を少しだけ八の字にして、自嘲気味に言う。
「困ったことに、俺にはまだそう思えなくてさ。……表面は元通りに見えても、奥深くは回復出来てないと思う。俺じゃなく、市川君がね」
「市川サンが過剰に気を使ってそうなのは、分かります」
オレの言葉に、朝比奈サンがうなづく。
「恋愛系の会話になると、市川君は途端にギクシャクしだすんだよね。俺も彼も無関係なものでも。つまりそれって、まだわだかまりを感じているってことだろ?」
「そりゃあれからまだ半年だし。恋愛に不慣れな市川サンなら、そんなもんじゃない?」
「市川君は繊細だものね。でも俺はその溝を早く埋めたいんだ」
「へぇー……」
ものすごく気のない相槌をうってしまう。
既に結論が見えてしまっている、肩透かしもいいところなソレに、真面目に聞く気が失せたからだ。
「どうすれば埋まるかを考えてみたら、俺と君の関係を良くすれば、もう少しはマシになるんじゃないかな? と」
そう思わない? とばかりに朝比奈サンはオレを見て、言葉を続ける。
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