はじまりの君

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はじまりの君

 以前から目をつけていたバーは、金曜日の夜ということもあってそこそこ混んでいた。  ネットの情報の通り、カジュアルな雰囲気で比較的入りやすい雰囲気の店だったが、それでも物怖じせずに入れるということはなく、扉に手をかけるまでに勇気と時間が少しかかった。  入ってすぐに店内と外気の温度差でメガネが曇り、薄暗い店内で更に視界が悪くなるという事態に内心少々焦る。  その動揺を誤魔化すように、見つけた空席に直進して即座ってしまってから、失敗したと気がついた。  席をとったのはL字カウンターの端。   (人見知りだから、隣に誰が座るか分からないカウンター席は好きじゃないんだよなぁ……!)    いきなり下手を打ったと後悔したが、そろそろと首を動かせば、出入り口を含めてそれなりに広い店内が割りと見渡せる席だった。  今後のためにも、どんな店か少しでも知りたいと考えていた身としては、良席かもしれないと思えた。
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