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あなたと一緒のクリスマス
ついこの間までハロウィン一色だったのに。
(すっかりクリスマスね)
街のショーウインドウはオレンジと黒から赤と緑に変わっている。赤や黄色に色付いていた木々もいつのまにか枝だけになっていて、イルミネーションの電飾がぐるぐると巻き付けられていた。六日には点灯式があるらしい。
(クリスマスは一緒にすごしたいな)
私は眼鏡の顔を思い浮かべる。
上司というには近すぎて、彼と呼ぶには遠い人。
TAMURAの冷血漢、近藤部長。
会社では吊り上がった目をして皆に恐れられているけれど、それは周りに舐められないための彼なりの処世術で、本当は優しい人。社内でこのことを知っているのは多分私だけ。
――西園は天使みたいだな。
低い声が耳の奥でこだまする。
夏、何気なく言われた台詞。思い出すだけで顔がだらしなく緩んでしまう。あれから三回、佐々木さんのお店で一緒に食事をした。けれどそれ以上でもそれ以下でもなくて、少しだけ寂しいのは事実だ。
(近藤さんにとって私は……)
キラキラと輝く金色の飾りに映る自分の顔を見つめ、小さくため息を吐いた。
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