あなたと一緒のクリスマス

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「ありがとう」  二十三階の部長室。窓を背にした大きなデスクに腰掛けていた近藤さんは、書類を受け取ると少しだけ口角を上げた。 (あ、笑顔)  普段は「超」がつく仏頂面だから、表情の変化はむしろ分かり易い。今のはスーパードライモードの笑顔だ。うふふふふ。  近藤さんは眼鏡のブリッジを押さえ、口を開く。 「西園君……」  うっかり緩みそうな口元を気合いで押さえつつ「はい」と返事をする。近藤さんは真一文字に口を引き結んで私を見た。 「……いや。やっぱり、なんでもない」 「言いかけて止められると気になります」  私は眼鏡の顔を見下ろして言う。近藤さんは書類を顔の横まで持ち上げた。 「すまない。本当に何でもない。ああ、これ、助かった」  近藤さんはそう言って視線を落とす。もうこれ以上話すつもりはないらしい。 (クリスマスのご予定は?)  私も訊きたいのに訊けなかった。もしかしたら近藤さんも同じなのかもしれない。もやもやとした気持ちを抱えたまま「失礼します」と部屋を後にした。
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