893人が本棚に入れています
本棚に追加
十二時を回り、今日は外で食べようと洋子とオフィスから出てきた。
「ねえ、ニッシー。クリスマスの予定は決まってる?」
「ううん、まだ」
「ちょっと。まだってどういうこと?」
洋子ががっちりと右腕を絡めてくる。
「え? だから未定……」
「おかいしわ!」
洋子は立ち止まって私の腕を引っ張った。
「普通は、ううん、で終わるところよ。まだってことはこれから予定を立てるみたいな言い方じゃない」
「……え……」
ぐいと覗き込むようにして顔が近付けられる。
「おかしいわ。もしかしてニッシー、彼氏できた?」
「でっ、できないわよ」
(鋭いっ)
ゆらりと逃げるように視線を外すと、ニッシー、と低い声が追ってきた。仕方なく視線を親友に戻す。バッチリとメイクをした顔が、半眼で眉間にシワを寄せていた。
「……彼氏じゃないけど、好きな人はできたの」
最初のコメントを投稿しよう!