図書館にて。

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
「兄ちゃん、どうやら新入りのようじゃな。」 書類に名前を書いている途中、職員らしいシワだらけの老人に声をかけられた。 図書カードを作っていたことから、察したのだろう。 「そうかい、やはりそうだったか。ここらじゃアンタ程大きいのは見ないからな。それにしても儂50歳じゃから、儂の30年前にそっくりじゃな。」 どう見ても後期高齢者である。 どうせごまかすならもっと若く設定しないのだろうか。 謙虚なんだかどっちなんだか。 そこは少し疑いを持ったが、どうやらいい人らしいので、話を続ける。 「儂もここにきた頃は図書館に足繁く通ったもんじゃ。」 がらんとした館内に、老人の声が響く。 「どうにかして脱出を試みたりしたもんじゃが、お前さんは無理せんようにな。それから……」 老人は、静かに、 「夜は出歩かん方がいい。」 と、真剣な口調で、そう言った。 「犯罪帝王が出るかも知れん。」 そうして、僕の書いた書類を見ると、 「偽名じゃな。まあよい。本名を書きたくなったら来なさい。」 「ありがとう、ございます。」 僕は本を3冊借りた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!