その夜

2/4
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
気が変わった。 なにが変わったのだと問われれば、それは決意である。 夜は出歩かないという決意が、急にねじ曲がったのだ。 犯罪帝王のことを聞いたあの時、僕はそれに恐れを成していた訳ではなかった。 今の僕と同じ位にだ。 本に書かれていた犯罪帝王の伝説は、おおよそ考えられないものだった。 1歳時点で日本監国に服役。 犯罪歴は…………全て。 にわかに信じがたいことだが、そんな奴が本当に存在するなら僕なんか敵いっこない。 大事を取って夜の外出を避けることにしたが、 巨大な監獄であるここで生きることに、意味なんてあるのか? というここに来て以来考えていた最大の悩みが解決してしまったから、 なんかもうどうでもよくなってしまったのだ。 このままつまらん人生を送るならば、何か壮大なことをして、死んだ方がまし。 という僕の持論にある「壮大なこと」というものに、犯罪帝王を、生ける伝説を自らの両目で目の当たりにすることを当てはめてしまえたのだ。(まるでルーベンスの絵画を追い求めるようだ。フランダースの犬は読んだことないけど。) 気が変わった。 生きるより、伝説を見よう。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!