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僕は良心より私心を優先する人間である。
図書館で老人が老婆心ながら言ってくれたことも(老爺心かもしれないが)無視して、夜に外出していることは、僕のそんな人間性に起因していると、言えなくもなかった。
そんな親切心からはかけ離れているであろう僕だが、さすがに良心が疼くことが、今目の前で起こっていれば、声をかけたくなるというものである。
少年が、地べたに仰向けになっていた。
余裕への自信満々といった具合でいびきを掻いている。
良心のある人間ならば当然声をかける。
世界有数の治安の良さを誇る国、日本国であろうとも、夜8時に外で寝ている子どもを見つければ「危険だ」と悟って何らかの処置を取るだろう。
ましてここは世界有数の治安の悪さを誇る国(誇れねぇ……)日本監国である。
はぁ、と僕は息吐いて
おいガキ、早く帰れ。犯罪帝王が出るぞ。
と言おうとした。
言えなかった。
正確には、いう対称がそこに存在しなかった。
見間違いか?と目を擦ると、
背後から、
僕の声より力強く、
僕の声より高く、
声が聞こえた。
「おいガキ、早く帰れ。犯罪帝王が出るぞ。」
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