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ポントニエール街のサンタクロースは、自分の担当する区域の子どもたちにプレゼントを届け終わりほっと一息ついていました。
公園のカウチに腰を下ろし、今はもう一枚の白い布となったプレゼント袋から、ピンク色のリボンを取り出します。このリボンのおかげで、今年は明け方まで街を飛び回ることになったのでした。
それというのも、袋をしっかり縛っていたはずのリボンがどういうわけだか解けてしまい、ゲームソフトやチョコレートボンボン、フランス人形、キラキラ光るステッキなど子供たちへ届けるはずのプレゼントがぽろぽろ落ちてしまったのです。すべて拾い終わって、最後の家の煙突から顔をだしたときには、もう東の空が白々としていました。
さて、そんなサンタクロースの前に、ひとりの女の子が姿を現しました。
深く積もった雪の上をザッザッと音を立てて歩いてきて、こわごわとサンタクロースを見上げます。
「サンタさん、プレゼントちょうだい」
「すまない、今日はもうプレゼントが残っていないんだ」
サンタクロースには謝ることしかできません。そんなサンタクロースに、女の子はなおも言いつのります。
「サンタさんプレゼントちょうだい。プレゼントあると思ったのになかったの。まくらをたたいてもツリーのしたにもぐってみても、みつからなくて……」
「それで外にでてきたのかい?」
今にも泣きだしそうな様子で、女の子はこくりと頷きました。
サンタクロースはポケットの中や靴のうら、ぺちゃんこのプレゼント袋をひっくり返したりしましたが、プレゼントになりそうなものは見つかりません。
女の子に謝ろうと顔をあげた瞬間、サンタクロースにある考えが浮かびました。
「そうだ。君にとっておきのプレゼントをあげよう。物語はお好きかな?」
女の子は不思議そうに首をひねりましたが、やがてゆっくりとサンタクロースの隣に腰掛けました。
そして、サンタクロースは語り始めます――
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