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あるところに、ひとりの女の子がいました。
女の子の名前はコンスタンス。親しい人からはコニーと呼ばれています。
コニーにはとりわけ大切にしているぬいぐるみがありました。七歳のお誕生日に、サンタクロースからもらったうさぎのぬいぐるみです。
友だちが遊びに来たときには、『ポントニエール街のコニー』と書かれたピンク色のリボンをうさぎの耳に巻いて、「この子はわたしのうさぎよ」と自慢せずにはいられないのでした。
ところがあるとき、家族で行った海の向こうの遠い国で、コニーはうさぎのぬいぐるみをなくしてしまいます。必死になって探しましたが、ぬいぐるみの消息はちっとも知れません。
やがて家へ帰る日が来てしまい、コニーとうさぎのぬいぐるみは離れ離れになってしまいました。
お話はこれでは終わりません。
泣きはらしたコニーが船で大海原を渡っているあいだに、うさぎのぬいぐるみは大冒険をしていたのです。
ぬいぐるみは最初の三日を、コニーたちが立ち寄った洋菓子店のショーケースの上で過ごしました。三日目の夜ようやく店じまいという時間になって、ひとりの男が慌てて入ってくると、ぬいぐるみに目を留めました。
「おや、このぬいぐるみはどこかで見たことがある」
「それはお客さんの忘れものだね。気が付いて戻ってくるかと思って、そのままにしているんだが」
客の男はうさぎのぬいぐるみを手に取り、リボンに書かれた「ポントニエール街」と「コニー」という言葉を見て「あっ」と声をあげました。
偶然にも、客の男はコニーたちを乗せたタクシーの運転手だったのです。
「たしかにポントニエールから来たと言っていたな。ホテルまで送り届けたから、泊っている場所も知ってるよ。私がホテルまで持っていこう」
しかし、うさぎのぬいぐるみが届けられたときには、もうコニーたちはホテルを後にしていました。
ここから、うさぎのぬいぐるみの大冒険が始まります。人から人の手へわたり、砂漠を越えて、海を渡り、ジャングルを駆け抜けて――
一か月後、コニーのもとへ帰ってきました。
真っ白だった毛は薄汚れて茶色くなっていましたが、うさぎのぬいぐるみとの再会をコニーはたいそう喜びました。
そして、コニーのリボンは幸せを呼ぶリボンとして「コニーリボン」と名付けられ、うさぎのぬいぐるみと同じように人から人の手をわたり、多くの人に幸せを届けたのです。
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