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「分かった分かった。洗いざらい白状するよ。これから父上に話をして、先方にも正式に申し込もうとしようとしているのに、エセリアの機嫌を損ねたらご破算にされかねないからね」
「まあ! 何て仰りようですか。私、そんな底意地の悪い小姑などに、なるつもりはありませんわ」
そこでエセリアが軽く拗ねてみせ、ナジェークが苦笑しながらそんな妹のご機嫌を取っていると、ここでエセリア付きの侍女であるルーナが彼の前にはお茶を、エセリアの前には紙の束とペンを静かに揃えた。
「……相変わらず有能だね、ルーナ」
「恐れ入ります。様子を見てお茶はお代わりをお出ししますが、喉に良い飴の類や軽食も、すぐお出しできるように準備してありますので、必要ならいつでもお声をかけてくださいませ」
「うん……、ありがとう。本当にエセリア付きだと、色々凡庸ではいられないのだろうね」
ナジェークは(これはエセリアの気の済むまで、相当根掘り葉掘り聞かれる事になるのだろうな)と覚悟しながら、一応確認を入れた。
「エセリア。君の知的好奇心を満たす為に、私の秘密の恋人の話をするのは構わないが、その話をそのまま本にするつもりなのかい?」
「それは話していただけた、お話の内容にもよります」
「そうか」
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