1428人が本棚に入れています
本棚に追加
「聞いた範囲の内容だけで充分に萌える内容でしたらそのままで、大して面白くないのなら、盛って盛って盛り上げて一大恋愛代叙事に仕立て上げてみせますわ! これぞ、作家の腕の見せ所ですわね!」
「…………」
ルーナは思わず俯いて溜め息を吐いたナジェークと、その反対側で「おーほっほっほっほっほ!」と高笑いしているエセリアから、無言で視線を逸らした。
「エセリア、頼む。本にする場合、色々な方面に差し障りが出る可能性があるから、固有名詞や設定は第三者には容易に察せない程度に変更してくれ」
「勿論です。それ位は常識ですわ」
至極当然のように断言されて、ナジェークの溜め息が深くなる。
「……時々、エセリアの常識について、もの凄く問い質したくなる事があるよ」
「御託は良いですから、いい加減、さっさと話してくださいません?」
「分かった。それではまず相手の身元だが、ガロア侯爵家のカテリーナだ。お前もクレランス学園在学中に、何度かは面識があると思うが」
催促されたナジェークがさらりと口にした名前を聞いて、エセリアは一瞬固まってから目を見開いて絶叫した。
「“あの”カテリーナ・ヴァン・ガロア様ですか!? れっきとした侯爵家令嬢でありながら騎士科に所属されて、今現在、近衛騎士隊で勤務されておりますわよね!? 王妃様をお訪ねした時、後宮で何度かお見かけした事もありますし!」
「そう、そのカテリーナだよ」
最初のコメントを投稿しよう!