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プロローグ~ 妹からの追及
世間を揺るがせた王太子婚約破棄事件が、ほぼ自分の書いた筋書き通りに終息した事を確認したエセリアは、この間、ある意味自分以上に暗躍していたと思われる兄を、自室に呼び出した。
「やあ、エセリア。自分の無実が証明され、縛りが無くなった自由な生活の気分はどうだい?」
入室するなりナジェークが発した、些か能天気にも聞こえるその問いかけに、彼女は苦笑の表情で自分の向かい側のソファーを手で勧めつつ、皮肉交じりの口調で応じる。
「おかげさまで最高ですわ。王太子殿下の婚約者などという面倒な肩書が無くなった今、活動の手を色々と広げたいところですが、その前にまず真っ先に解消したい疑問がありますの」
「おや? 何かな?」
「この期に及んで、しらばっくれないで貰えますか? お兄様の、意中の方に関してのお話です。この前の建国記念式典の時に、全て事が片付いたらきちんと教えてくださると仰いましたよね?」
そう言いながら(この期に及んで誤魔化そうとするなら、容赦しないわよ?)という気迫を醸し出しつつ睨んできた妹に、元より隠し通す気は無かったナジェークは楽し気に笑った。
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