(1)些細な揉め事

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(1)些細な揉め事

「カテリーナ、クレランス学園の入学までもう少しだな。準備は進んでいるか?」  家族全員揃っての夕食の席で、何気無い口調で父親のジェフリーに問われたカテリーナは、彼に笑顔を向けながら答えた。 「はい、お父様。お兄様方やお義姉様からお話を伺いながら、滞りなく進めております」 「そうか。学園には普段交流が無い家の者や、優秀な平民も入学するからな。決して彼らに後れを取ったり、侮られたりしないようにしなさい」 「はい」  このアンティル国において殆どの上級貴族の者が入学するクレランス学園は、将来の優秀な官吏を養成する為、平民にも門戸を開いて学費は無料で受け入れており、国内でも珍しい身分を越えた交流の場ともなっていた。それはわざわざ厳めしい顔で指摘されなくとも分かっていたが、カテリーナは神妙に頷いてみせる。 (お父様が学園在学時は、さぞかし周囲を威圧していたのでしょうね……。入学後に親友になられたと聞いている、ラドクリフおじさまのご苦労がしのばれるわ)  今現在、近衛騎士団の団長を務めている父の親友を連想した彼女は、思わず当時の彼の苦労を想った。するとここで、母親のイーリスが尋ねてくる。     
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