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駅を出ると、旅館の車が待っていて荷物を回収されて旅館へと向かう。 車で20分すらも、カクカクしてる瞬を見るとなんか申し訳なくなる。 「起こすから寝ていいよ」 「ん、でもせっかくの旅行だからね、起きて...るよ」 そう言って頑張ってるけど眠いなら寝た方が、後々スッキリするのに。 「瞬...もう少しみたいだから、部屋についたら寝なよ?」 「ん」 ぼーっとしながら、返答するあたり昨日寝てないなこりゃ。 車の揺れが心地好くて、差し込む光も柔らかくてついついウトウトする寸前で、車は円を描く様に一つの建物の中へと入った。 前に泊まった旅館みたいな老舗ではなく、結構大きな建物だ。 会社の枠とは別に、俺と瞬の部屋をとったのは、神川さんに瞬も行くと話した時だった。 『 太郎は俺の部屋で、お付きの人は佐々木たちの部屋でいいね』 と、ふざけた事を言い出したのが切っ掛けで瞬が部屋を押さえたのだ。 全く...神川さんは、瞬を動かすのが上手い...ダシに使わないで欲しいけどね。 そして結果...部屋を取った瞬が俺の宿泊費も出すと言って聞かないから俺の分は俺が出した。 「タロ...鍵もらった」 フロントで、手続きをした瞬がカードキーを俺に渡した。 「じゃ、行きましょ」 そう伝えて、 先へ行こうと思ったらボーイさんが案内してくれるらしい。 荷物持ってもらって、俺は瞬と部屋へと向かう。 「お部屋は5階となります」 そう言ってエレベーターの5が押されると浮遊感を感じる。 「こちらです。」 案内されたのは、横開の引き戸でそれを開けると中に段差があり靴を脱いで靴箱へ入れれば、案内してくれた人が先に鍵で中に入っていた。 「カードはここに入れて下されば電気が付きます」 そう言って部屋から出て行った。 俺は荷物を運び込まれた場所にそのままで、気忙しく窓へ向かった。 「すげ」 第一声がそれだった。 窓の下は川が流れ、岩肌に当たる水が飛沫を立てて跳ね飛び散るのが5階の部屋からでもわかるほどだ。 そばに行けば流されてしまうほどの激流だろうと、目で感じ取れる。 「ほんとだ...」 背後から瞬の声が聞こえて、二人で窓の外を見ていた。 「はぁ、タロと旅館来るなら二人が良かった」 今更だなと思いながら瞬の首に腕をまわしてつま先を伸ばすと鼻の先をスリスリと擦りつけた。
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