最終章 薔薇色に変わる

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               * 一年後、「喫茶・薔薇色」の店主が代わった。 小此木さんは自分が元気なうちに店をゆずっておきたいと、 大切に守り続けてきた「薔薇色」を修二さんと私に託したのだ。 夫婦になった私達に。   でも店にでるのは修二さんだけで、私はまだ仕事を続けている。 ここまでがんばってきたのだから、定年まで勤め上げたい。 その考えに修二さんが賛成してくれたのだ。 それに、私が手伝うまでもない。毎日、小此木さんが店にいるのだから。 カウンターの端の席はご隠居となった小此木さんの指定席。 だけどじっと座っていることに慣れていない小此木さんは、 結局今まで通り店の中で動き回っている。 でもその光景が、一番自然に見える。 愛おしそうにサイフォンを眺め、語りかけるような口元を見せながら豆を挽く、 品の良い年寄りの姿は、いつまでもカウンターの中で輝いていてほしい。 いつか・・歴史は変わり目を迎える。 その時に明るい未来の光を感じられるように、毎日を精一杯生きよう・・   今日も薔薇色のコーヒーは、私の、この店を愛するすべての客達の、 鼻腔に神秘の香りを届けてくれる。
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