第4章 金曜日の常連

2/12
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
  成沢さんは、金曜の夕方に「喫茶・薔薇色」に来るようになった。   ハンカチをいただいた翌週は、会社主催の飲み会があったので 薔薇色には行かなかったが、月曜の朝に小此木さんがご丁寧にも報告してくれた。 「今度成沢さんがお店にきたらラインで知らせるよ。あ、村山さんスマホ持ってないね」 80になる年寄りがスマホを扱えるっていうのに、 30歳も年下の私はいまだにガラケーでがんばっている。 遅れてるよ、と小此木さんに鼻で笑われた。 「いいんですよ、スマホは無くても生きていけますから。  それにメールはできるでしょ?」 なんだかんだ言いながら、そこは外さない。 どんな手段でもかまわない。情報を教えてくれるなら。 「でも・・めずらしいですね、マスターがそんなお節介するの。  なにか・・企んでるんじゃないでしょうね?」 私は大先輩をからかいながらも、心の隅で不思議に思った。 どうしてわざわざ私に成沢さんが来ている事を知らせるのか。 知らせるということは、店に寄れ、ということか。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!