
息をするように、恋をする。
ヒナを見る、ひたむきな視線。
どんな表情も焼き付け、どんな仕草も見落とさまいとする、ひたむきな視線。
それに強く焦がれた。
あの目が。
海棠司のあの目が、ヒナではなく自分に向けられるのを想像すると、肌がざわりと粟立った。
「ユイくん、なにを見てるの?」
隣から声をかけられ、
唯人は意識を引き戻された。条件反射のように、唇に笑みが浮かぶ。
「べつに、なにも」
流し目を、隣に座る男に送ってやると、彼の喉がゴクリと上下するのが見えた。わかりやすい反応に、唯人は満足する。
唯人はここ、会員制クラブ『emperor』のホストだ。
一般的なホストクラブのホストとは、その仕事内容は違う。ここではシャンパンコールもしなければ、女相手にへりくだることもしない。
客層は、中高年の男で、そこに稀に20代の若者も交じるが、彼らすべてに共通するのはその社会的地位ステイタスの高さだ。
議員に弁護士、医師やIT企業の代表、大企業の取締役などなど。
最初のコメントを投稿しよう!