唯人・1

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唯人・1

49f04fe5-eb4d-442c-9697-dcadbdf2a89a 76896b81-a87b-4c24-b06c-e5a55bcefdb1  息をするように、恋をする。  ヒナを見る、ひたむきな視線。  どんな表情も焼き付け、どんな仕草も見落とさまいとする、ひたむきな視線。  それに強く焦がれた。  あの目が。  海棠(かいどう)(つかさ)のあの目が、ヒナではなく自分に向けられるのを想像すると、肌がざわりと粟立った。 「ユイくん、なにを見てるの?」  隣から声をかけられ、唯人(ゆいと)は意識を引き戻された。条件反射のように、唇に笑みが浮かぶ。 「べつに、なにも」  流し目を、隣に座る男に送ってやると、彼の喉がゴクリと上下するのが見えた。わかりやすい反応に、唯人は満足する。  唯人はここ、会員制クラブ『emperor』のホストだ。  一般的なホストクラブのホストとは、その仕事内容は違う。ここではシャンパンコールもしなければ、女相手にへりくだることもしない。  客層は、中高年の男で、そこに稀に20代の若者も交じるが、彼らすべてに共通するのはその社会的地位ステイタスの高さだ。  議員に弁護士、医師やIT企業の代表、大企業の取締役などなど。     
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