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ポーチに集まった実は、記憶がなくなるにつれ消滅する。よほど胸糞悪い思いをしたり、見てはいけないものを見て後悔した時は、なかなか消えない。
どんな人も、『胸のつかえが取れない』とか、『違和感が残る結末だった』とか言うだろう。また、『奥歯にものが挟まったような』とか、目に見えない異物感を感じる表現がいくつかあるだろう。これが私の手のひらに集まる実だ。私は目に入った光景からふと感じる違和感の理由を邪推してしまった時に、またこうして人の事情を勝手に想像してしまったと反省する。その時に生まれる違和感の塊が実になる体質なのだ。
だいたい手のひらに収まる量がポロリと集まるだけで、ポーチに移して素知らぬ顔をしているので、誰にも気づかれない。
しかし、たまに小粒で大量に出てきた時は少し焦ってしまう。
電車の中で小さな木の実が落ちていたとしたら、ベビーカーの赤ちゃんがもてあそびながら寝てしまってこぼれ落ちたどんぐりの実か、私の勘ぐりの実です。落としてしまった際はごめんなさい。そして私が動揺して取りこぼしてしまうほどの何を目撃したか、どうぞ勘ぐって下さい。
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