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どうですか?いつもサークルで会う時とちょっと違うでしょ?今日はなんか可愛いねとか言ってもらえるかな?彼女は自分の全力投球に、最大限の賛辞がもらえると信じてやまない。熱っぽい視線で先輩を見上げて、そんな素振りをみせたりなんかしてませんと装っているのか、共通の知人の噂話なんかをふっている。今日は映画を観て食事をして、それから、アレですよね!みたいな期待感をこれだけ女の子からアピールされて、先輩は明らかに面食らっている。
いわゆる草食系男子の彼は、待ち合わせ場所に笑顔で彼女が現れた瞬間たじろいだ。うわ、すごいな。これが第一印象だった。どうしよう、今日映画とラーメン屋さんに行くつもりだったんだけどなあ。え、俺、めっちゃ期待されてる?まあ悪くはない子だとは思うけど、彼女の仲良しのもう一人の子の方が顔は好みなんだけど、え、どうしよう。今日決めなくちゃだめ?
彼女が電車の中で次々に挙げる話題は取るに足らないことばかりで、右から左へ通過してしまう。折々彼女が見上げながら微笑みかけるので、へどもど返す。
とりあえず、池袋で降りよう。また考えよう。
そんな様子のカップルを見て、勝手にあれこれ想像すると、私の手のひらにはいつのまにかドングリのような木の実が現れる。ゲスの勘ぐりから生まれる実。今回はなかなか大きな実がとれた。私はこれをいつものポーチにしまった。
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