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まだ数駅しか移動していないのに、おじさんは性急だ。腰、腹、横乳のフォーメーションで撫でること数回のあと、ついに手の甲で下乳を押し上げるようになった。おばちゃんはさすがに笑ってちょっと!と静止しているが、おじさんはおどけて、おばちゃんを背後から抱きしめている。もう本当にそういうのはこんなアウトドアではなく、きちんとお部屋のしかるべき場所でやって欲しい。ぎりぎりおじさんもおばちゃんも明るく笑ってキャッキャキャッキャ言いながらだから、年甲斐もなく凄い連中だなあと笑って見ていられたが、よく考えるとおじさんはもう電車の中ですでに愛撫を始めていたのだ。早いよ、早いよ!
おじさんとおばちゃんは楽しそうに上野で降りていった。謎の年齢層と謎の関係性を突き詰めて推測する行為を制止するかのような、二人の楽しげな様子から、勘ぐりの実はたくさん集まった。いやに大粒でぷりぷりした実だが、おそらくあのカップルのように、中身はカスカスの古い実なんだと思って、強く握らないよう優しくポーチに移した。
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